私の母は、待ちに待ってやっと出来た女児でした。
とても可愛がられ、大切に育てられたのです。
だからと言って、わがまま放題ではなく、躾も厳しかったようです。
性格は、苦労して人生を渡ってきた祖父に似て、口数が少なく、大人しく穏やかでした。
私は、父親似だと言われる通り、明暗がはっきりとした性格で、幼い頃から男まさりで、かなりわがままでした。
そんな手に負えない私ですのに、母は決して咎めたり大きい声で叱ったり、ましてや叩いたりすることもなく、私が自分の思いのままにならず泣き叫んでいても、じっと黙って耐えているような人でした。
そして、兄弟姉妹の間で口喧嘩をして、姉達が私のことを母に告げても、穏やかに「そこがY子の良い所よ」と返答したそうです。
私の行動を温かく見守り、口先だけで制止されたような記憶はありません。
何に対しても恐れず、チャレンジ精神で前進出来たのは、どんな体験も黙って見守ってくれた母の強さ、そして優しさのお陰であると思います。
温かい愛を、夫や子供、親にはむろん、近所の人々にも与え続けた、すばらしい母でした。
嫁と姑、近所の問題など、様々な悩みを抱えて、母に相談に来られた方も大勢いました。
母は口が固いので、近所の方々からも信頼されていたのでしょう。
外見は地味で、とても静かな雰囲気の母でした。祖父と共に衣類と呉服の商売を営んでいましたが、母が亡くなって十年になろうとしている今、やっと気づいたのです。
それは、平凡な生涯ではなく、むしろ、人の真似できない、深い愛と思いやりに満ちた、純度の高い精神レベルの人であったということです。
自分のことよりも、常に、家族や身近な人々を助け、包みこんでくれ、温かい安らぎを感じさせてくれる人でした。
他の人の幸せを祈り、一瞬一瞬を、喜びの笑顔で多くの人々に接していた母の眼差しは、決して忘れることは出来ません。
私も、心が荒れた時、悲しい時には、母の力強く温かい励ましを思い出して、新たな勇気をもらい、努力していこうと思います。
そして「深い愛と思いやりを本当にありがとう!」と、天国の母へ、感謝のメッセージを送りたいと思います。
もし来世で生まれ代わったら、母の魂に出会い、どうか、ご恩返しをさせて下さいと、神様に祈るのです。
このような素敵な魂の人を、今生、母としてご縁をいただいたことに有難く感謝しています。
執筆者:佐藤さん
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